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COLUMN コラム

配信の効果的な頻度と回数

情報を定着させる頻度と回数は、どの程度が効果的か?

 

サイネージを利用して情報を伝えたい時、どれくらいの頻度で流すことが効果的なのかを調べてみました。

ぜひ最後まで読んで、お役立ていただければ幸いです。

 

♦ 人の記憶は1時間後には半分しか覚えていない 


 

「人は忘れる生き物です」とよく言われます。

これはドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが「覚えたことをどのくらいの期間で忘れ、その記憶をどのくらいの期間で取り戻せるか」を実験した結果からも分かります。

 

エビングハウスの忘却曲線

<結果>

1時間後には、56%を忘却

1日後には、74%を忘却

 

記憶してから1時間後には約半分を忘れていることが分かりました。

しかしこれは同時に、早く復習することで、覚え直す労力が少ないことも証明されています。

 

この実験は「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(意味のない単語)で関心のない知識を覚えた場合であり、研修や仕事では上記より緩やかな曲線になる傾向にあります。

 

 

♦ すぐ思いだせる記憶=長期記憶 


 

記憶には大きく2つに分けることができます。

・手続き記憶:自転車の乗り方や泳ぎ方など、一度習得すれば忘れることがない記憶です。

・陳述記憶:難しい知識を覚える記憶で、数式や歴史の年号が当てはまります。

 

この陳述記憶は長さによって更に3つの種類に分けられます。

・短期記憶 : 1分程度しか保持されない情報です。記憶の引き出し場所を見失っている状態です。

・中期記憶 : 1ヵ月程度しか保持されない情報です。引き出しの場所が手の届く範囲にある状態で、使わないと消えていきます。

・長期記憶 : 母校の名前や実家の場所など、しばらく使わなくてもいつでも思いだせる情報です。記憶の引き出しが整理され、いつでも取り出せる状態です。

 

基本的に物忘れというものは、この短期や中期記憶の引き出しがどこにあるか分からない状態で、完全に忘れているわけではなく、思いだせないというのが正しいです。

「全ての物事をすぐに覚え、思いだせたらどんなに楽か」と思いますが、人間の脳みそはそのように作られていません。むしろ、全て覚えていたら脳がパンクしたり、嫌な思い出をずっと鮮明に覚えていたりと、生活に支障が出てきます。

忘れることや思いだせないことは人間にとって自然なことであることはご理解ください。

 

 

♦ 短期記憶から長期記憶へ移行させる3つの方法 


 

ではどのようにすれば長期記憶の領域に推移させることができるのでしょうか。

3つの方法をご紹介します。

1.エピソード記憶:感情と紐づけて覚えることで記憶に残りやすい傾向にあります。例えば初デートの想い出や、大事な試験の記憶は思いだせるのではないでしょうか?

2.場所法:自宅の場所や学校の通学路など、場所は記憶として残りやすいことが証明されています。それを活用して「場所」と一緒に記憶する方法です。

3.メモの活用:エビングハウスの忘却曲線にあるように、何度も見返すことで忘れにくい長期記憶へ持っていくことができます。

 

メモだけでなく、ポスターやサイネージを活用して何度も目に触れるところにあることで長期記憶へ促すことができます

ただしどれくらい時間を掛ける必要があるかは、その事項に興味があるか無いかによって差が出てきます。

 

記憶

 

 

♦ 記憶の定着は睡眠がポイント 


 

それでは復習するベストなタイミングはいつでしょうか?

ベストな復習のタイミングは「忘れかけたころに復習すること」です。思い出そうとすることで脳が動きだします。

これは受験生が単語や公式を覚える際に行う方法で取り入れられている方法です。

 

・短期記憶→中期記憶へ持っていく為に:7日間以上復習
・中期記憶→長期記憶へ持っていく為に:2ヵ月間以上復習

そうして長期記憶に入ると、数か月復習しなくても忘れない領域に入ります。

 

7日間以上とは、1日に1回以上を7日間という意味合いです。

1日に7回接触する場合と何が違うかというと、ポイントは睡眠です。

人は寝ている間に情報を整理し、理解を深めると言われています。

 

また7日間はあまり頻度を空けすぎなければ、毎日ではなく間隔をあけて7日間でも良いとされています。

その日に一気に詰め込むよりも、複数日にわけて何度も出会うことで記憶の定着に繋がります。

 

 

 

♦ まとめ:結局、サイネージは1日何回流すのが適正なの? 


 

1人に対して1日1回以上、数か月にわたり繰り返し伝えることで、

興味がないことでも定着していくことが分かりました。

 

ただし、見て貰っていることが前提となります。

複数人が同じタイミングでアナウンスを見ているとは限りません。

全員に知らせたい場合、人の出入りを考えて接触回数を上げ、1日に1回以上全員が目に触れるタイミングを見極めていただくことが必要になります。

 

 

 

♦ 補足:好感度があがる接触回数 


 

好感度アップイメージ

 

好感度と長期記憶に定着することは少し異なります。

人は初見の人物や物事に何度も接触することで、警戒心が薄れていき、関心や好感度が高まっていく心理傾向があり、それを「ザイオンスの法則(単純接触効果)」と呼びます。

 

それほど興味のなかった曲や芸人さんを、CMやドラマで良く見聞きするうちに口ずさんでいたり、いつの間にかその芸人さんが出ている番組を選んで見るようになっていたことはないでしょうか。

 

1968年に米国の社会心理学者ロバート・ザイアンスが立証した心理作用です。

このザイオンスの法則は、長期間使用するよりも短期間に集中して使った方が効果を発揮しやすいという結果が出ています。

1ヵ月に1回接触するよりも、1週間に1回接触する方が効果が高く、また1時間で1回接触するよりも、5分間を10回接触する方がより効果があります。

 

好感度の図

 

ザイオンス効果の接触効果は10回がピークとなり、それ以降の好意は増幅しにくく、

また高頻度すぎると「しつこい」という逆効果の悪い印象を与えます。

いつかの震災時、同じCMばかりで嫌になりませんでしたか?

 

さらにザイオンス効果は、ネガティブな印象を改善させる力はありません。

既にネガティブな印象を持っている商品や人がやみくもに接触回数を増やしてきても、好意に変わることはありません。

 

最初の印象と10回目までに接触する期間、10回以上の頻度が好感度を持っていただけるチャンスということですね。

 

 


 

参考文献

エビングハウスの忘却曲線

短期記憶と長期記憶

好感度

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